企業価値を高めるERM入門
保険を知りたい
先生、『ERM』って一体どういう意味ですか?難しそうでよくわからないです。
保険アドバイザー
『ERM』は、会社全体で起こりうるあらゆる危険をまとめて管理する方法のことだよ。会社にとって何が危険か見つけて、その危険をどう減らすか、あるいは避けるかを考えるんだ。
保険を知りたい
会社全体で、ですか?例えば、どんな危険があるんですか?
保険アドバイザー
例えば、地震や火事などの災害、商品の不具合、不正アクセス、法律の変化など、会社には色々な危険が潜んでいるよね。そういった危険を全部まとめて考えて、会社の価値を高めるようにしていくのが『ERM』だよ。
ERMとは。
会社などが仕事を進める上ですべての危険を、会社全体を見て、まとめて広く戦略的に捉え、評価して、会社の価値などを最大にするための、まとめた危険の管理のことについて説明します。
全体像の把握
会社をうまく経営していくためには、危険を予測し、備えることがとても大切です。そのための方法として、統合的危険管理というものがあります。これは、会社全体で起こりうるあらゆる危険をまとめて把握し、対処していく方法です。
以前は、それぞれの部署で別々に危険管理を行うことが一般的でした。例えば、営業部は売上減少の危険、製造部は製品事故の危険、経理部は資金繰りの危険といった具合です。しかし、このような個別の対応では、会社全体としての危険の状況を把握しきれず、思わぬ大きな損失につながる可能性がありました。
統合的危険管理では、お金に関する危険、事業運営に関する危険、災害による危険など、会社に関わるあらゆる危険を、部署の垣根を越えてまとめて管理します。それぞれの部署でバラバラに対応するのではなく、会社全体で危険の状況を共有し、対策を考えることで、より効果的に危険を減らすことができるのです。
例えば、大雨による浸水の危険があったとします。従来の方法では、それぞれの部署が個別に浸水対策を行うかもしれません。しかし、統合的危険管理では、会社全体で浸水の危険度を評価し、優先順位の高い部署から対策を行うなど、より効率的で効果的な対策を実施できます。
このように、統合的危険管理によって、会社は予期せぬ損失を最小限に抑え、安定した事業活動を続けることができるようになります。会社の規模に関わらず、危険管理の全体像を把握し、組織全体で対応していくことが、会社の成長と発展には不可欠と言えるでしょう。
項目 | 従来の危険管理 | 統合的危険管理 |
---|---|---|
危険の把握 | 各部署で個別に危険を把握(例:営業部:売上減少、製造部:製品事故、経理部:資金繰り) | 会社全体で起こりうるあらゆる危険をまとめて把握(例:お金、事業運営、災害) |
対策 | 各部署で個別に危険対策を実施 | 会社全体で危険の状況を共有し、優先順位の高い部署から対策を実施(例:大雨浸水対策) |
効果 | 会社全体の危険状況把握が不十分で、大きな損失につながる可能性あり | より効果的に危険を減らし、予期せぬ損失を最小限に抑え、安定した事業活動を継続 |
リスクの洗い出し
事業を長く続けるには、何が危険かをきちんと知ることが大切です。そのためには、会社全体で危険となりうるものを探し出す必要があります。これが、危険管理の第一歩です。
危険の種類は様々です。まず、お金に関するものがあります。景気が悪くなったり、物が売れなくなったりして、会社の収入が減ってしまうかもしれません。また、急に物価が上がったり、為替の値段が変わったりすることも、会社の経営に影響を与えます。他にも、競争相手が出てきたり、新しい商品が開発されなかったりすることも、会社の将来を左右する危険です。
お金に関すること以外にも、様々な危険があります。例えば、地震や台風などの自然災害で工場が壊れたり、操業が止まったりするかもしれません。また、法律が変わったり、新しい規則ができたりすることで、会社の活動に制限がかかる可能性もあります。従業員の不正行為や情報漏えいなども、会社にとって大きな損害となる危険です。
これらの危険を探すには、色々な方法があります。会社の財務状況を分析したり、普段の仕事の様子を注意深く観察したりすることが重要です。また、従業員に話を聞いて、現場の状況を把握することも欠かせません。色々な角度から情報を集めることで、隠れた危険を見つけ出すことができます。
危険の洗い出しは一度で終わりではありません。定期的に見直し、新しい危険がないか、また、以前からある危険に変化がないかを確認する必要があります。危険の大きさや起こりやすさも考えて、優先順位をつけることが大切です。そうすることで、限られた資源を有効に使い、より効果的に危険対策を行うことができます。
危険の種類 | 具体例 |
---|---|
お金に関する危険 | 景気悪化、売上減少、物価上昇、為替変動、競争激化、新商品開発の遅れ |
自然災害 | 地震、台風による工場の損壊、操業停止 |
法規制の変更 | 法律改正、新規則制定による事業制限 |
社内リスク | 従業員の不正行為、情報漏えい |
その他 | 隠れた危険 |
リスクへの対応
私たちは、事業を行う上で様々な危険と隣り合わせです。これらの危険、すなわち「おそれ」は、事業の成功を妨げる可能性があるため、適切な対応が必要です。危険への対応方法は大きく分けて四つあります。まず一つ目は、危険そのものを避ける方法です。例えば、新しい事業を始める際に、市場調査の結果、成功の見込みが低いと判断した場合、その事業への参入を取りやめることで、損失という危険を未然に防ぐことができます。二つ目は、危険を減らす方法です。地震や火災などの災害による損害を少しでも減らすために、建物の耐震工事をしたり、防火設備を導入したりするといった対策が考えられます。三つ目は、危険を他の誰かに引き受けてもらう方法です。これは、保険に加入することで実現できます。火災保険に加入すれば、火災が発生した場合の建物の損害を保険会社が補償してくれます。つまり、火災による経済的な危険を保険会社に移転していることになります。最後の四つ目は、危険を自分自身で受け入れる方法です。比較的発生確率が低く、発生した場合の影響も軽微な危険については、費用をかけて対策を講じるよりも、自分で責任を持つことを選択する場合もあります。例えば、会社の備品であるパソコンが故障する危険については、保険に加入せず、故障した場合には自費で修理するという対応も考えられます。どの対応策が最適かは、危険の種類やその影響の大きさ、対応にかかる費用などを考慮して判断する必要があります。そして、一度対応策を決めたとしても、状況の変化に応じて定期的に見直し、改善していくことが重要です。常に危険に注意を払い、適切な対応を心掛けることで、事業を安定して継続していくことができます。
危険への対応方法 | 説明 | 例 |
---|---|---|
危険の回避 | 危険そのものを避ける | 市場調査の結果、成功の見込みが低い事業への参入を取りやめる |
危険の軽減 | 危険を減らす | 耐震工事、防火設備の導入 |
危険の移転 | 危険を他の誰かに引き受けてもらう | 火災保険への加入 |
危険の保有 | 危険を自分自身で受け入れる | パソコンの故障リスクを自費で修理することで対応 |
管理体制の構築
事業を取り巻く様々な危険をうまく管理し、会社を守り育てるための仕組み、つまり、全社的リスク管理をうまく動かすためには、しっかりとした管理のしくみを作ることがとても大切です。まず、誰がリスク管理の責任者なのかをはっきりさせなければなりません。責任者が決まれば、その人を中心に、会社全体でリスクに関する情報を共有するしくみを作る必要があります。たとえば、社内ネットワークを使って情報を共有したり、会議を開いたりするなど、情報をスムーズに伝えられる方法を考えなければなりません。
また、社員一人ひとりがリスク管理の大切さを理解し、きちんと対応できるよう、教育や研修を行うことも重要です。研修では、リスクの種類や見つけ方、実際に起きた時の対処法などを学ぶ機会を設ける必要があります。全社的リスク管理は、経営陣だけでなく、現場で働く社員まで、会社全体で取り組むべきものです。全員がリスク管理の大切さを理解し、積極的に関わっていくことで、初めて効果が現れます。
そのためには、定期的に会議や報告会を開き、リスク管理の状況を共有し、問題があれば解決していく必要があります。例えば、月に一度、各部署の代表者が集まって、最近起きた出来事や今後起こりうる危険について話し合う場を設けるのも良いでしょう。また、リスク管理の状況をまとめた報告書を作成し、経営陣に報告することも大切です。会議や報告会では、発見されたリスクの大きさや影響度、そしてそのリスクへの対策を具体的に話し合い、記録に残しておく必要があります。そして、これらの記録は、今後のリスク管理に役立てるために、きちんと保管し、いつでも見直せるようにしておく必要があります。このように、会社全体で情報を共有し、問題解決に取り組むことで、全社的リスク管理はより効果的に機能し、会社を守り、成長させていく力となります。
項目 | 内容 |
---|---|
責任体制 | リスク管理の責任者を明確にする。 |
情報共有 | 社内ネットワークや会議などを活用し、リスク情報を全社で共有する仕組みを作る。 |
社員教育 | リスクの種類、見つけ方、対処法などを学ぶ研修を実施する。 |
会議・報告会 | 定期的に会議や報告会を開き、リスク管理の状況を共有・問題解決を行う。
|
記録管理 | 発見されたリスクの大きさ、影響度、対策を記録し、保管・活用する。 |
継続的な改善
事業を取り巻く様々な危険をうまく管理することは、会社の成長にとって欠かせません。そのためには、危険管理の仕組みを一度作って終わりとするのではなく、常に改善していく必要があります。これを継続的な改善と言います。
世の中の流れは常に変化しており、会社の内外で様々な変化が起こります。新しい技術が登場したり、法律が変わったり、競争相手の状況が変わったり、思いもよらない出来事が起こることもあります。このような変化によって、今までになかった新しい危険が生じたり、これまであまり重要でなかった危険が急に大きな問題になったりすることがあります。また、会社の事業内容が変われば、危険の種類や大きさも変わるでしょう。
このような変化に対応するためには、定期的に危険の種類や大きさを調べ直す必要があります。例えば、年に一度、あるいは大きな変化があった時には、関係部署が集まって話し合い、危険の洗い出しと評価を行うことが重要です。そして、必要に応じて危険への対策を考え直します。例えば、保険の見直しや、新しい設備投資、従業員への教育訓練などを検討する必要があるかもしれません。
また、危険管理の仕組み自体がうまく機能しているかどうかも定期的に評価する必要があります。例えば、情報共有がスムーズに行われているか、担当者の役割分担は適切か、必要な資源が確保されているかなどを確認し、問題点があれば改善策を考えます。そして、改善策を実行した結果、本当に効果があったのかを確認し、さらに改善していくという流れを繰り返すことが重要です。この繰り返しを続けることで、より効果的な危険管理の仕組みを作ることができます。
変化への対応を怠ると、せっかく時間をかけて作った危険管理の仕組みも役に立たなくなってしまいます。ですから、常に変化を意識し、改善を続けることが、会社の未来を守る上で非常に大切です。
導入の効果と利点
事業の土台を支えるものとして、危機管理体制の導入は、会社にとって様々な良い点をもたらします。まず初めに、想定外の損害をできる限り小さくし、揺るぎない事業活動を続けることが可能になります。例えば、自然災害や不祥事といった予期せぬ出来事が起きたとしても、事前に対応策を練っておくことで、被害を最小限に食い止め、速やかに事業を再開することができます。これにより、顧客や取引先からの信頼を失うことなく、安定した経営を維持することができるのです。
次に、危機への対処能力を向上させることで、他社に負けない強みを育むことができます。市場の変化や競合他社の動向など、様々な危機に対して迅速かつ的確に対応できる体制を整えることで、競争優位性を築き、市場での地位を確立することができます。変化の激しい現代社会において、これは企業の成長にとって不可欠な要素と言えるでしょう。
三つ目に、会社全体の判断の質を高め、より良い経営を実現することができます。危機管理体制を導入することで、経営陣は様々なリスクを客観的に評価し、適切な対策を講じることができるようになります。これにより、意思決定の精度が向上し、無駄な投資や誤った判断を避けることができます。限られた資源を有効活用し、効率的な経営を実現するためにも、危機管理は重要な役割を果たします。
四つ目に、出資者からの信頼感を高め、会社の価値を高めることができます。しっかりと危機管理体制を構築している企業は、出資者にとって安心して投資できる対象となります。堅実な経営姿勢を示すことで、出資者からの評価を高め、資金調達を円滑に進めることができます。これは、企業の成長を加速させ、更なる発展へと繋がる重要な要素です。
このように、危機管理体制の導入は、単なる危機対応の手段ではなく、会社の経営の土台を支える重要な要素です。危機を適切に管理することで、会社は着実に成長を続け、社会に貢献していくことができるのです。
危機管理体制導入のメリット | 説明 |
---|---|
事業継続性の確保 | 想定外の損害を最小限に抑え、事業活動を継続。顧客や取引先からの信頼維持、安定経営を実現。 |
競争優位性の確立 | 危機への対処能力向上により、市場変化や競合他社への迅速な対応を実現。市場での地位確立。 |
経営判断の質の向上 | リスクの客観的評価、適切な対策の実施。意思決定精度向上、無駄な投資や誤った判断を回避。効率的な経営を実現。 |
会社価値の向上 | 出資者からの信頼感向上、資金調達を円滑化。企業成長の加速、更なる発展に貢献。 |
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